12.2. ノルム空間とBanach空間
- No associated Lean code or declarations.
ノルム.
実ベクトル空間 X 上の写像 \|\cdot\|:X\to [0,\infty) がノルムであるとは,任意の x,y\in X と任意の a\in\RR に対して
次を満たすことをいう.
-
\|x\|=0 \iff x=0 -
\|ax\|=|a|\,\|x\| -
\|x+y\|\le \|x\|+\|y\|
- No associated Lean code or declarations.
ノルム空間.
実ベクトル空間 X とその上のノルム \|\cdot\| の組 (X,\|\cdot\|) をノルム空間という.
Remark.
ノルムが与えられると,
d(x,y):=\|x-y\| によって距離が定まる.
したがってノルム空間では,点列の収束やCauchy列を距離空間と同様に定義できる.
- No associated Lean code or declarations.
Banach空間.
ノルム空間 X がBanach空間であるとは,
X の任意のCauchy列が X の元に収束することをいう.
- No associated Lean code or declarations.
\RR^d の p-ノルム.
x=(x_1,\dots,x_d)\in\RR^d に対し,
1\le p<\infty のとき \|x\|_p:=\left(\sum_{k=1}^d |x_k|^p\right)^{1/p},また \|x\|_\infty:=\max_{1\le k\le d}|x_k| と定める.
これらは \RR^d 上のノルムである.
- No associated Lean code or declarations.
1\le p\le\infty に対して,(\RR^d,\|\cdot\|_p) はBanach空間である.
\{x^{(n)}\}_{n=1}^{\infty} を \RR^d のCauchy列とし,
x^{(n)}=(x_1^{(n)},\dots,x_d^{(n)}) と書く.
各成分 k=1,\dots,d に対して
|x_k^{(n)}-x_k^{(m)}|\le \|x^{(n)}-x^{(m)}\|_p が成り立つ.
したがって各実数列 \{x_k^{(n)}\}_{n=1}^{\infty} は \RR でCauchy列であり,
\RR の完備性より極限 x_k:=\lim_{n\to\infty}x_k^{(n)} が存在する.
x:=(x_1,\dots,x_d)\in\RR^d とおく.
1\le p<\infty のとき
\|x^{(n)}-x\|_p^p
=
\sum_{k=1}^d |x_k^{(n)}-x_k|^p
\to 0
である.
実際,和は有限個しかないので,各項が 0 に収束すれば和も 0 に収束する.
また p=\infty のときは,各 k について
|x_k^{(n)}-x_k|\to 0 であるから,有限個の実数の最大値も 0 に収束して
\|x^{(n)}-x\|_\infty
=
\max_{1\le k\le d}|x_k^{(n)}-x_k|
\to 0
を得る.
よって \{x^{(n)}\} は x\in\RR^d に収束する.
したがって \RR^d は完備である.
Remark. 有限次元空間では,各成分ごとに議論できるため, 完備性の証明は比較的素朴である. しかし関数空間では成分が有限個ではないので, 完備性は自明ではない. この違いが有限次元と無限次元の大きな分かれ目である.