12.1. 動機づけ
微分積分では,1つ1つの関数を個別に扱ってきた.
しかし関数解析では,
\text{連続関数全体},\text{可積分関数全体},\text{二乗可積分関数全体}
のような「関数の集まり」自体を対象にする.
そのとき最初に必要になるのは,
関数の大きさや2つの関数の近さを測る道具である.
例えば連続関数 f,g に対して
\sup_{x\in X}|f(x)-g(x)| が小さければ,f と g はどの点でも一様に近いと言える.
また可積分関数に対して
\left(\int_X |f-g|^p\,d\mu\right)^{1/p} が小さければ,平均的な意味で近いと言える.
この「大きさ」を抽象化したものがノルムであり, そのノルムに関して極限が取り尽くされている空間がBanach空間である. Lebesgue積分論の収束定理は, まさにこうした完備な関数空間の上で本領を発揮する.